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からだを信頼する

 

昨日ご来店下さったYさんのこと。

 

Yさんは過去に大きなお怪我のご経験がある。

 

細かいものを入れればまだまだあるが、メインは右の肋骨と鎖骨を中心に10カ所以上の上半身の骨折、肺とお顔の損傷だ。

 

九死に一生を得たYさんだが、お身体右側の可動制限、胸部のぎゅっと締め付けられるような痛みとつれ、呼吸がしづらい息苦しさ、お顔の痛みとつれは今も残る。

 

 

 

去年の今くらいの時期に初めて来店されたYさんは、痛みや不調について滔々と話して下さるも、どこか気難しそうで半信半疑、といった感じだった。

 

お話を聞いていく内に、そのような印象になるのも無理はない、と思った。

 

何故なら、あらゆる病院や接骨院、整体で、Yさんが痛みや不調を訴えても、「そこが痛むはずが無い」「そこがつるのは仕方ない」と痛みに寄り添ってもらえることはほとんど無かったと言う。

 

痛み止めや湿布を出される、可動するところをとりあえずマッサージ、ストレッチしてもらう、という方法でなんとか凌いできたものの、医療者や施術者に対しての落胆や諦めは深まっていくばかりだったと、お話からも容易に想像できた。

 

だから、初めて会った施術者の私に対して半信半疑な様子も、仕方なかったのである。

 

 

 

お身体を拝見する為に立って頂くと、身体は右前に旋回するように偏り、右重心を通り越して今にも倒れそう、それに合わせて骨盤から下の両膝や両足首も関節を変位させながら、なんとかバランスをとって踏ん張っている、という塩梅だった。

 

 

当然だが、こうなってくると、痛む部分は過去にお怪我をしたところ以外にも出てくる。

 

Yさんが言うには、胸部以外にも、右腕のだるさ、腰と背面がつらくて寝返りをうつこともままならない、また、両足が引っ張られるように痛いということだった。

 

 

お身体を拝見するにあたって、施術の起点は手の指からだった。

 

胸筋や腹筋などの身体前面のかたさ、こわばりは、手指を起点にして必要な関節と筋に触れていくことで、一切の力をいれることなく調整することができる。

 

初回はかなり重い手応えだったが、それでも1回の施術で右側への重心の倒れ、呼吸の苦しさの軽減は改善された。

 

その後、複数回の施術を経て足の痛みを訴えることも減った。

 

 

それでも寒くなってきて胸部の痛みと呼吸の苦しさが出てきてしまい、間隔が開きながらも、昨日は5回目の施術だった。

 

手指以外にも、お顔や頭部からの調整が進み、後頭部から背面がよくゆるみ、腰のズーンとした痛みは無くなった。

 

また、過去にお怪我された胸部、特にぎゅっと締め付けられるように痛んでいた右側のアンダーバストも、しゅるしゅると解放されるようによく緩んだ。

 

 

また、施術途中に面白いことが起こった。

 

前頭部から過去のお怪我したお顔部分を調整している時に、ご本人が何も意図していないのにも関わらず、勝手に顔面がきゅっとなったりゆるんだり、痙攣するような動きを見せたのである。

 

「これはナニ~? 勝手にお顔が動きます…」

 

と少し困惑されたようなYさん。

 

私はにこにこしながら、

 

「よくあることです~。」

 

とお答えした。

 

 

実際に、施術途中に関節がぐるぐると動いたり、痙攣するように身体が動くことはよくあることなのだ。

 

動く理由はその方によって違うのだが、過去に受けた衝撃を解放する為だったり、筋肉などの皮下組織がより良い新しいバランスをとる為に、自発的に勝手に動いてくれるのだ。

 

 

Yさんのお顔の動きはしばらく続いた後に、ゆっくり収束していった。

 

ちょうど私がお顔の調整を終えて、鎖骨やみぞおちなど、身体中央の調整を始めるのと同じタイミングだった。

 

 

ちなみに、施術において、他の部分でも軽く触れるくらいの力加減だが、顔や頭部に関しては、直にしっかり触れることはもうほとんど無い。

 

反応が良いところなので、手をかざすくらいで十分なのである。

 

今回のYさんの頭部から顔の調整も、ほとんど触れていない。

 

それなのに、自発的にYさんのお顔は動き始め、そして、ゆっくり収束していった。

 

これは私の施術の力というよりも、Yさんのお身体の力である。

 

私は必要最小限のアプローチをしたまでで、変化をしたのは、Yさんのお身体の元々もっているバランス取りの成せる技であった。

 

 

 

そして施術を終えてから、Yさんにお身体の変化を聞いてみた。

 

「胸の痛みが減っています。

肋骨がよく広がって、息をするのが楽になりました。

 

あと、顔のあちこちがつって痛かったのに、今は全然痛くないです!」

 

とのことだった。

 

 

その日、施術前にYさんは最近の不調を感じるタイミングについて、こんなことを言っていた。

 

「朝、顔を洗おうとするでしょう?

 

洗面台に向かうと上半身と胸がつって痛くって、顔も皮膚が薄くてつって、水につけるだけでヒリヒリして痛くって…」

 

 

多分、このような日常生活の痛みのストレスも減っていくのではないかなぁと思っていることと、お身体を拝見して思ったことを率直にお伝えした。

 

 

 

「Yさん、お身体のことをもっと信頼して、大丈夫だと思います。」

 

 

「私がちょっとお手伝いしただけで、面白いくらいお身体が変化するでしょう?

 

それは、Yさんのお身体がきちんと良いバランスに変わる力を元々お持ちだからです。

 

きちんと変化できるのは、お身体が敏感なんです。とても良いことだと思います。」

 

 

Yさんは意外そうな、でも少し嬉しそうな表情だった。

 

 

今まで、身体のあちこちが痛くて、日常生活がつらくて、ご自身のお身体の不調ばかりが目についていたであろうYさん。

 

ちょっとどこか痛いだけで不機嫌になってしまう自分を思い出せば、Yさんの日常は想像しえないものだと思う。

 

きっとご自身の身体を疎ましく、恨めしく思うこともあったろう。

 

 

だけれども、そこに湧き上がる感情をクローズアップしてしまうと、いよいよ暗い沼に沈んでいってしまう。

 

感情は湧き上がっていくものとして受け流して、ご自身のからだを信頼して頂くきっかけをつかんで頂けたなら、見える景色が変わってくる。

 

そのようなきっかけの施術になったのではないかなぁと、思っている。

 

 

 

 

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