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身体反応におけるLess is more

写真は愉和法施術時、指先から全身調整を始めるところ。

 

「Less is more」という言葉があります。

簡単に訳すと、「より少ないことは、多いこと」「より少ないことはより豊か」という感じでしょうか。

 

 

これを身体反応と関連づけて、愉和法の施術の回数を重ねていくと、受け手側も施術側も大いに頷けることと思います。

 

身体というのはとても繊細で、ぐっと押したり強く揉んだりすると、それに対応できるように無意識に抵抗するか、長時間続くと刺激に慣れて無感覚になっていきます。

 

これでは、施術は浸透しませんし、身体もかたくなっていきます。

 

単純に「肩が凝っているから、とりあえず肩を揉んで!」とか「全身バキバキだから、強い力でもみほぐしてほしい」というインスタントな施術を求めている人にとっては、少し理解が難しいかもしれません。

しかし実際、体感して頂くと、その価値観が揺らいで面白いと思います。過去の私がそうだったように。

 

愉和法のタッチは、上の写真のように、「触るか触らないか」程度の圧で行います。

なぜそのような加減かといいますと、それが一番、身体が変化する手ごたえがあるから、です。

 

ここでいう身体の変化とは、身体の自発的な変化です。

強い圧によって身体を他力的に変化させることは容易いですが、それは瞬間風速的なもので、すぐに元に戻ってしまいます。

そして、身体的には揉み返し、精神的には強い力で身体をいじられたことに対する施術への心のバリアを作るもととなります。

 

 

愉和法は自発的な身体の変化を促す「Less is more」の手法です。

身体を観察し、必要なところを見極め、最小限のタッチで身体の変化を待ちます。

すると、そっと触っているだけなのに胸郭が開いて呼吸が深くなったり、つっぱっていた身体がゆるんでベッドにしっかりと接地していったりと、身体が勝手に自発的調整を始めます。

 

触る圧は少ない方が望ましく、愉和法を始めた清水先生の言葉を借りるなら、「紙1枚隔てたくらい」の圧が平均です。

身体反応が鈍い時ほど、手を離した方が良い反応が出てくることもあります。

つまり、肉体そのもの、というよりは、受け手側と施術側の間合いといいましょうか、一番共鳴する場を探し出すことも、良い身体反応を引き出すポイントとなるのでしょう。

とにもかくにも、基本ルールとしては、やはり、触りすぎない、というのがあります。

 

清水先生はよく、「一歩ひいた姿勢で、繊細に触る」ということをおっしゃっていましたが、これは肉体だけでなく、気持ちの面でもそうです。

「痛みをとってあげよう」とか「治してあげたい」という気持ちすら、敏感な受け手の方は重い圧迫感を感じ、無意識の壁を作ることでしょう。

 

私も本当にここはまだまだ修行が足りず、難しいところなのですが、常にニュートラルな心身状態で、目の前のお身体との必要な間合いを見極め、最小限の刺激で身体の自発的変化を促す、これが一番の近道だと思っています。

 

 

「Less is more」はドイツ出身の建築家ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエが自らの作品の標語にしたそうです。

また、ローエはその他にも「God is in the detail(神は細部に宿る)」という言葉も標語にしていました。

どちらも、整体につながる言葉と思います。